東京地方裁判所 昭和40年(レ)350号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕しかして、一個の賃貸借契約によつて一区画の土地を賃借した者が、その一部分のみを他人に使用せしめた場合でも、賃借人はがんらい賃借土地を他人に使用せしめる権限を有しないのであるから、特に別段の事情のないかぎり、賃貸人に対する著しい背信行為があるものとして、賃貸人は右賃貸借契約の全部を解除しうるものと解すべきである。そして、右の解除権の範囲を賃借人が他人に使用せしめた部分に限るべき特段の事情としては、全部の解除のために、賃借人が多大の損害を蒙るという事情があることだけで足りるものではなく、一部の解除に限定するときは、賃貸人の意思に基づかないで賃貸土地が区分され、これにともなつて賃貸人は、従前一体として賃貸していた土地を今後は、賃借人が他人に使用せしめた部分とその余の部分とに区分して、使用ないしは賃貸することを余儀なくされるのであるから、少くともその土地の広狭、形状ならびに周囲の状況などから、そのような区分が可能であり、なおかつ適切であることは勿論のこと、賃貸人にとつても、その土地を一体として使用しまたは賃貸する場合に比較して、賃貸条件等において不利益を蒙ることがなく、客観的にみて賃貸人の合理的な意思に反しないという特別の事情が認められねばならない。
これを本件についてみると、……によれば、本件土地の地積は七四・八七平方米(二一・六五坪)にすぎないのであるから、これを(イ)および(ロ)の土地に区分すると、それぞれの土地は三七平方米余(一一坪余)のきわめて狭隘なものとなつてしまい、この区分に従つて使用ないしは賃貸するとすれば、本件土地を一体として使用ないし賃貸する場合に比較して、一般的にいつても賃貸人たる控訴人に不利益となるものといわねばならないであろうし、すでに認定したとおり、本件土地が従前から(イ)および(ロ)の土地として使用収益されてきた事実は認められないし、また控訴人が被控訴人に(イ)および(ロ)の土地の各別の使用権を承認した事実も認められないのであるから、本件土地の賃貸借契約の解除を、斉藤が訴外古田島に使用せしめた(イ)の土地の部分に限定すべき特段の事情があるものとはいいがたく、また被控訴人の言うが如く、控訴人が新たに権利金をとつて(イ)の土地を訴外古田島に賃貸したとしても、その事実から控訴人が被控訴人より暴利をむさぼろうとしていると推断することは相当でないし、その他本件全証拠によつても、本件賃貸借契約の全部の解除が権利の濫用であるとの主張を採用するに足る事実を発見することができない。(室伏壮一郎 篠原幾馬 浅生重機)